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任意売却とは?通常売却や競売との違いやメリット・デメリット

任意売却とは?通常売却や競売との違いやメリット・デメリット

最終更新日 2023/12/09
企画・執筆・編集:大泉 聡

 
マイホームを購入する場合、住宅ローンを組んで購入するのが一般的なので、毎月決められた一定の金額を返済していくことになるでしょう。
 
しかし、新型コロナウイルスの影響で仕事が激減し、収入が減ってしまった場合や、離婚などのライフスタイルの変化から、毎月の支払いが厳しくなってしまった方も多いと思います。
 
ローンの返済ができなくなってしまうと、最悪の場合、自己破産をして家を手放すことも視野に入れなくてはいけなくなるでしょう。
 
もし、ローンの返済が厳しいのであれば、競売にかけられてしまう前に、「任意売却」で物件を売却することをおすすめします。
 
この記事では、任意売却のメリットやデメリット、任意売却をするための条件や手続きの流れについて、わかりやすく解説していきます。

目次

任意売却とは?

任意売却とは任意売却とは、住宅ローンを滞納し、物件を競売にかけられてしまう前に、住宅ローンを組んだ金融機関の同意を得て自分の意思で住宅を売却する手続きのことを指します。
 
住宅ローンを滞納すると金融機関から督促が届きますが、この督促を無視して返済しないでいると、住宅ローンの一括返済を請求されます。多くの場合、一括で返済できる資力はないはずなので、最終的には住宅を差し押さえられ、強制的に競売にかけられることになります。
 
競売は、市場価格よりも安く競り落とされる可能性が高く、また居住者も強制的に退去させられます。裁判所の執行官が自宅に現状調査に来るため、近隣住民に借金でトラブルがあったことがバレてしまうでしょう。
 
その点、任意売却は、自分の意思で住宅を売却する手続きなので、近隣住民に借金トラブルがバレてしまうことはありません。また、市場価格で住宅を売却できるため、金融機関にとってもメリットが大きいといえます。
 
通常、住宅ローンがまだ残っている場合、残った住宅ローンの担保として家に抵当権を設定しているため、金融機関が抵当権を抹消してくれることはありません。そのため、いくら住宅を売却しようと思っても、抵当権がついている住宅を買ってくれる人はいないため、実質的に住宅を売却をするのは難しいということになるのです。
 
しかし、任意売却の場合、抵当権を設定している金融機関と交渉し、売却して得た利益を住宅ローンの返済に充てることを約束することで、登記されている抵当権を抹消してもらい、実質的に不動産の売却ができるようになります。
 
金融機関が抵当権を抹消してくれる理由は、以下の2つです。

金融機関が任意売却に応じてくれる2つの理由
  1. 裁判所を通した手続きである競売よりも、かかる手間やコストが少ない
  2. 市場価格で物件を売却できるため、競売よりも多くのお金を回収できる

また、もし税金の滞納等で住宅を差し押さえられている場合には、市区町村の役所で差し押さえの取り下げをしてもらう必要があります。
 
抵当権を抹消したり、差し押さえを取り下げるということは、債権者にとって不利な条件を呑んでもらうことになるので、売却益で滞納している住宅ローンや税金を返済することを、しっかりと主張する必要があります。
 
必ず任意売却を認めてもらえるわけではないので、任意売却の経験が豊富で、交渉のノウハウも有している弁護士や司法書士に対応を依頼することをおすすめします。

任意売却と競売の違い

任意売却と競売の違いは次の通りです。

任意売却と競売の違い
任意売却
競売
手続きの進め方 不動産会社や任意売却の専門家のサポートのもと、自分で手続きを進める
裁判所が主導して強制的な手続きを進める
売却金額 おおむね市場価格
市場価格の6割〜7割
債権者への返済額 多い
少ない
引越しにかかる費用 債権者や買主から引越し代が出る事がある
自己負担
周囲に手続きがバレるかどうか バレない
競売物件である事がインターネットや新聞で公示されるため、周囲にバレる
売却したあとにローンが残った場合 分割返済やその都度返せる分だけ返済するなど、債権者と交渉ができる
融通が利かないため、返済できないなら自己破産や財産の差し押さえになる
退去日 債権者との交渉で決める
落札者が決める日
転居先 任意売却の専門家から転居先を紹介してもらえる
自力で探す
売却後に自宅に住み続けることができるか リースバックを利用して住み続けることも可能
ほぼ不可能
現金が残る可能性 あり
ほぼなし
自己破産などの法的整理に関するアドバイス 任意売却の専門家からアドバイスがもらえる
自分で法的整理を調べるしかない

競売は、住宅ローンの返済ができなくなってしまった場合に、抵当権を実行することで強制的に住宅を差し押さえ、裁判所が主導で競売の手続きにかけられることになります。
 
競売での落札額は、市場価格の6割から7割程度となることが多く、また、競売にかかるさまざまな費用も上乗せされてしまうため、住宅ローンの返済に充てられる金額も少なくなってしまうのが特徴です。
 
また、競売の場合、自宅が競売物件になっていることが世間一般に公示されるため、近隣住民や勤務先の同僚に、競売にかけられたことがバレてしまう可能性があります。
 
一方、任意売却は、抵当権をつけている金融機関に任意で抵当権を抹消してもらい、不動産会社や任意売却の専門家のサポートのもと、自分で手続きを進めていくことになります。
 
任意売却であれば、多くの場合、市場価格で売却できるため、金融機関から見ても大きなメリットがあります。また、任意売却であれば、自分で自宅を売却する手続きをとることになるため、周囲の人に借金トラブルを勘繰られることもありません
 
競売は、住宅ローンを回収するための苦肉の策ともいえるため、債務者、債権者双方からみてほとんどメリットはありません。住宅ローンの返済が苦しいのであれば、速やかに任意売却を進めることをおすすめします。

任意売却物件と通常物件の違い

任意売却された物件は、不動産会社やデバロッパーなどの特定の業者だけが購入できる特殊なルートで販売されているわけではなく、通常物件と同じように、インターネットで検索して購入することが可能です。
 
公開されている情報や購入時期についても通常物件とほとんど同じように公開されているため、通常の物件を購入するのと同じように考えて問題ありません。
 
ただし、任意売却物件を住宅ローンを利用して購入しようとする場合、審査が長くなる可能性があることに注意が必要です。不動産業者としては、同じ物件で、再度住宅ローンが払えなくなるという失敗を避けるために、買主を厳格に審査する傾向にあるようです。
 
また、購入できる時期は明確にされていますが、任意売却手続きの状況次第では、売買契約が白紙になってしまう可能性もあります。
 
さらに、住宅ローンが払えなくなり家を売却するしかなくなった、という経緯を持つ任意売却物件では、部屋の中が荒れていて、前の居住者の生活痕が見えてしまう可能性もあります。
 
通常物件よりもお得な価格で売り出されることが多い任意売却物件ですが、物件としての価値が高いと判断されると、通常よりも高い価格で売りに出されていることもあるので、購入する場合には注意が必要です。

任意売却物件サイトとは?

任意売却物件は、一般的な不動産ポータルサイトだけでなく、任意売却物件専門のサイトでも探すことができます。
 
会員制だったり、非公開物件を取り扱っていたり、購入目的が不動産投資をする場合に限定されているなど、サイトによって特徴が異なります。
 
首都圏の任意売却物件限定で販売しているサイトもあるので、自分の目的に合うサイトを利用することで、効率良くお得な物件を探すことができるでしょう。

任意売却のメリット

任意売却のメリット競売にかけられるよりも任意売却をすべき理由はどこにあるのでしょうか。
 
任意売却のメリットは次の通りです。

任意売却の5つのメリット
  1. 市場価格もしくはそれ以上で売却できる可能性がある
  2. 交渉次第では引越し代を出してもらえる可能性がある
  3. 周囲に事情を知られずに手続きを進められる
  4. 引っ越し日を調整できる
  5. 残った債務の返済方法について金融機関と交渉できる

それぞれ詳しく確認してみましょう。

市場価格もしくはそれ以上で売却できる可能性がある

任意売却の場合、競売と違い自由に売却活動をおこなえるため、市場価格もしくはそれ以上の価格で売却できる可能性があります。
 
おおむね市場価格で売却するケースが多いですが、買主との交渉次第では、それ以上の金額で売却できることもあるでしょう。
 
残りの住宅ローン次第では、売却後に手元にお金が残る可能性があることが、任意売却1番の魅力であるといえるでしょう。

交渉次第では引越し代を出してもらえる可能性がある

任意売却では自分で売却条件等を設定できるため、任意売却にかかる費用や新居の引越し代などを、売却価格に含めて交渉することができます。
 
競売の場合、手続き費用や引越し代などは全て自分で持つ必要がありますが、任意売却の場合、これらの費用を全て売却代金の中に含めることができます。
 
そのため、新居での生活が始まるまでの出費を抑えることができ、新生活の準備にお金をかけることができるでしょう。

周囲に事情を知られずに手続きを進められる

任意売却の場合、競売のように売却情報が公示されることもないので、周囲に事情を知られることなく売却の手続きを進めることができます。
 
競売の場合、住宅が競売にかけられていることが、インターネットや新聞で公示されてしまうため、周囲の人間に事情がバレてしまうおそれがあります。
 
この点、任意売却の場合、売りに出されている物件であることが公示されることはないので、「借金が払えなくなって家を手放すことになった」というセンシティブな情報が、外部に漏れる心配はありません。

契約日や引っ越し日を調整できる

任意売却の場合、買主との協議によって契約条件や家の引渡し日を決めるため、引越しの日程を自分の都合の良い日に調整する事ができます。
 
いざ家を売却するとなると、転居先を決めたり、子どもの学校問題を解決しないといけなくなったりと、決めなくてはいけない事がたくさんあります。
 
競売の場合、売主の事情は関係なしに強制的に物件が競売にかけられてしまい、買主が決まったらすぐに退去を命じられるため、引越しする日を調整する余地がありません。
 
この点、任意売却であれば、契約日や引越し日を買主と協議して自由に設定する事ができるため、事情が変わったとしてもフレキシブルに対応する事が可能です。

残った債務の返済方法について金融機関と交渉できる

任意売却で得た利益で住宅ローンを返済しても、住宅ローンが残ってしまった場合、残りの債務の返済方法を金融機関と交渉することができます。
 
任意売却は、あくまでも住宅ローンを返済するためにおこなわれるものなので、住宅を売却したお金で住宅ローンを返済仕切れない場合には、残りの債務を返済する必要があります。
 
競売の場合、住宅を売却したあとに債務が残ってしまうと一括返済を求められることになるため、その他の財産を差し押さえられてしまうか、自己破産を検討することになるでしょう。
 
一方、任意売却であれば、住宅ローンを設定している金融機関との交渉次第で、分割払いや余裕があるときに返済する方法などをとることができます。そのため、生活に大きな影響を与えることなく、新居での生活をスタートすることができます。

任意売却のデメリット

任意売却を有効に活用するためには、メリットだけでなくデメリットも存在する手続きであることを理解しておく必要があります。
 
任意売却のデメリットは次の5つです。

任意売却の5つのデメリット
  1. 信用情報に傷がついてしまう
  2. 住宅ローンの保証人に迷惑をかける可能性がある
  3. 金融機関から売却の同意を得る必要がある
  4. 任意売却をしても払いきれなかった住宅ローンの支払いは続く
  5. 競売にかけられる前に任意売却をする必要がある

以下、それぞれ詳しく解説していきます。

信用情報に傷がついてしまう

任意売却した場合、住宅ローンを支払うことができなくなって任意売却をした、という事故情報が信用情報に登録されてしまいます。
 
この信用情報に傷がついている状態のことを、ブラックリストに載ると表現されることもありますが、信用情報に傷がついてしまうと、一定期間ローンが組めなくなったり、クレジットカードを使用できなくなったりする可能性が高いので、注意が必要です。
 
ただし、任意売却ではなく競売にかけられてしまった場合であっても当然に信用情報に登録されることになるため、住宅ローンの返済ができなくなった時点で、信用情報に傷がつくのは避けられないといえるでしょう。
 
なお、信用情報に登録された事故情報は一定期間経過すると削除されますが、どれくらいで削除されるかは個々の事情により異なるため、一概にはいえません。
 
任意整理と同じように、おおむね5年〜7年程度は登録されたままになると考えておくと良いでしょう。

住宅ローンの保証人に迷惑をかける可能性がある

住宅ローンを組む際に保証人をつけていた場合、任意売却をすることで、保証人に住宅ローンの支払いの督促がいく可能性があります。
 
場合によっては、保証人の方の財産が差し押さえらてしまう可能性もあるため、任意売却をする際は、保証人の方と連絡をとり、協力して手続きを進めることをおすすめします。
 
なお、任意売却時点で離婚していて、元配偶者が保証人になっている場合には、元配偶者と連絡が取れなかったり、協力をしてもらえなかったりする可能性があり、スムーズに手続きが進まないことも少なくありません。
 
もたもたしていると競売にかけられてしまうおそれがあるため、保証人の協力が得られない場合には、不動産家さんや任意売却専門家チーム、弁護士などに相談することをおすすめします。

金融機関から売却の同意を得る必要がある

任意売却は、個人の判断だけで売却条件等を決定できる訳ではなく、あらかじめ金融機関の同意を得る必要があります。
 
金融機関としては、住宅ローンの残りの債務をしっかり返済してもらうことを一番に考えているため、金融機関から任意売却の同意を得るためには、具体的な返済プランを提示する必要があります。
 
住宅ローンの支払いが厳しくて任意売却をしているのに、「任意売却後に残りの債務を一括で返済します」などと、無謀な返済プランを提示してしまうと、金融機関が任意売却を認めてくれない可能性が高いでしょう。
 
返済プランを提示する際は、残りの債務がいくらで、住宅はいくらで売れる予測で、収入からみてこれくらいであれば毎月継続して返済できるなど、明確かつ具体的なプランを提示するようにしてください。

任意売却をしても払いきれなかった住宅ローンの支払いは続く

任意売却で無事、市場価格で物件を売却できても、残りの住宅ローン次第では、全額返済しきれない場合があります。
 
住宅が売却されて、抵当権が抹消されたとしても、住宅ローン契約そのものが消えてなくなるわけではありません。そのため、住宅ローンの返済が全て終わるまでは、毎月の返済は続くことになります。
 
ただし、競売と違い、任意売却であれば毎月の返済額等を金融機関と交渉することができるので、生活に支障が出ない範囲で、計画的に返済していくことができます。

競売にかけられる前に任意売却をする必要がある

任意売却は、競売にかけられてしまう前に手続きを進める必要があります。
 
競売と違い任意売却は、基本的に自分主導で売却の手続きを進めていくことになりますが、いい条件で売却できるまで売却活動をし続けられるわけではありません。
 
個々の事情により異なりますが、おおむね住宅ローンを滞納してから10〜12ヵ月程度で競売にかけられてしまうケースが多いようです。
 
ただし、住宅ローンの滞納状況次第では、滞納から6ヵ月程度で競売にかけられるケースもあるため、あまり時間に余裕はないといえるでしょう。
 
あらかじめ、任意売却の手続きをしっかり理解し、準備をしっかりしておかないと、焦って売却することで、あまり良くない条件で売却することにもなりかねません。

任意売却に必要な4つの条件とは?

任意売却は、自分一人で全ての手続きを進めることができるわけではなく、次の4つの条件を満たす必要があります。

任意売却に必要な4つの条件
  1. 金融機関に合意してもらい、抵当権を抹消してもらう
  2. 売却期間に余裕がある
  3. 不動産の共有者の同意を得ている
  4. 保証人の同意を得ている

それぞれの条件について、詳しく確認していきます。

金融機関に合意してもらい、抵当権を抹消してもらう

任意売却をするためには、住宅ローンを組んでいる金融機関から同意を得ることで、抵当権を抹消してもらう必要があります。
 
住宅ローンを組んで住宅を購入した場合、通常その住宅には抵当権がつけられています。これは、住宅ローンの返済が滞った場合、その抵当権を行使することで、住宅を競売にかけられるようにするためにつけられています。
 
そのため、抵当権がつけられたまま住宅を売却しようと思っても、そのままだといつ抵当権を行使されるかわからない状態なので、誰も買ってくれず、実質的に売却することは不可能になってしまいます。
 
つまり、抵当権をつけている金融機関と交渉することで、任意売却の許可をもらい、抵当権を抹消してもらうことが重要なのです。
 
金融機関としても、競売よりも高い金額で売却できる可能性の高い任意売却の方が、メリットが大きい場合が多いため、明確な返済計画を提示できれば、多くの場合で任意売却の許可を得ることができるでしょう。
 
なお、滞納が続いた場合には、もともと銀行が持っていた債権が保証会社に移っているケースもあるため、合意してもらうべき相手が誰なのかは、事前に確認しておく必要があるでしょう。

売却期間に余裕がある

任意売却は、競売にかけられてしまう前に手続きを進める必要があるので、売却を進める期間にある程度余裕を持たせておくことが必要です。
 
たとえば、住宅ローンを滞納してからすでに6ヵ月以上経過してしまっている場合には、いつ競売にかけられてもおかしくない状況であるといえます。
 
いい条件で任意売却の手続きを進めるためには、金融機関に任意売却の許可をもらうための期間や、転居先の決定、売却する住宅を買主に吟味してもらう期間が必要になります。
 
住宅ローンを滞納してから売却の準備を進めるのではなく、返済が厳しいと感じ始めたら、すぐに任意売却の準備をするくらい時間に余裕を持たせるようにしてください。

不動産の共有者の同意を得ている

任意売却をする物件に共有者がいた場合、その共有者全員から任意売却の同意を取り付ける必要があります。
 
不動産を共同で所有している場合、共有している者のうち1人の判断で不動産を売却することは認められていません。
 
よくあるのは、夫婦共同名義で自宅を購入したが、その後離婚してしまい、任意売却をすることになったケースや、自宅を購入するときに両親に頭金を半額出してもらい、代わりに不動産の共有持ち分を設定するケースです。
 
このケースでは、共有者である配偶者や両親の同意が必要になります。
 
なお、共有者については、住宅の登記簿で確認してください。

保証人の同意を得ている

住宅ローンを組む際に保証人をつけていた場合、その保証人の同意も必要になります。
 
保証人に話を通さず手続きを進めてしまうと、「住宅ローンが払えなくなって任意売却するなんて聞いていないから、残りの住宅ローンを払う義務なんてない」とトラブルを助長してしまうおそれがあります。
 
また、任意売却しても住宅ローンを完済できない場合、保証人が残りの住宅ローンの一括返済を要求されてしまう可能性があります。
 
任意売却して住宅ローンが残った際には、毎月計画的に返済していく具体的な返済プランを提示して、できるだけ穏便に話を進めるようにしてください。

任意売却できないケース

任意売却は、金融機関の同意を得ればいつでもおこなうことができるわけではなく、次のようなケースでは、任意売却ができない可能性があります。

任意売却できない可能性があるケース
  1. 税金を滞納して任意売却物件を差し押さえられている
  2. 管理費や修繕積立金を滞納している

以下、それぞれ解説していきます。

税金を滞納して任意売却物件を差し押さえられている

税金を滞納して住宅を差し押さえられてしまっている場合、任意売却の手続きを進めることができません。
 
差し押さえをされている場合、差し押さえ権者が優先的に物件を競売にかけて、その利益を得ることができる状態です。そのため、差し押さえ権者の同意なしで、勝手に任意売却を進めることはできません。
 
税金の滞納で差し押さえを受けている場合には、滞納している税金を一括もしくは分割で返済する約束をして、差し押さえを解除してもらう必要があります。

管理費や修繕積立金を滞納している

自宅がマンションの場合、管理費や修繕積立金を滞納していると、任意売却の手続きを進められない可能性があります。
 
管理費や修繕積立金は、マンションの管理組合に支払うべき代金になりますが、滞納金額があまり大きくない場合には、任意売却で得た代金から滞納額を支払うことを約束することで、金融機関が管理組合から任意売却の了承を得ることになります。
 
ただし、滞納金額があまりに大きい場合、その約束をしてしまうと金融機関の住宅ローンに充てられる金額が少なくなってしまうため、金融機関が任意売却に同意してくれないことがあるのです。

任意売却の流れとは?

任意売却は、次のような流れで進んでいきます。

任意売却の流れ
  1. 住宅ローンを滞納する
  2. 期限の利益を喪失する ※滞納から3〜6ヵ月
  3. 代位弁済がおこなわれ銀行から保証会社に債権が移る
  4. 市場価格調査のため、自宅の査定を依頼する
  5. 債権者に任意売却の合意をしてもらう
  6. 買主を探す
  7. 売買契約の締結・契約の条件を設定
  8. 物件の引き渡し
  9. 金融機関と残った住宅ローンの支払いについて交渉する

「期限の利益」とは、「返済期日までにお金を返済すれば問題ないですよ、つまり借りた金額の一部だけ返済(分割返済)すればいい」という、借金をしている側が有している法律上の利益のことを指します。
 
今までの滞納状況や金融機関にもよりますが、おおむね3〜6ヵ月程度で「期限の利益」を喪失し、金融機関から一括返済を要求されます。
 
期限の利益を喪失してから1ヵ月もかからないうちに、住宅ローンの債権が保証会社に移ることになります。
 
それ以降は、任意売却に向けて手続きを進めることになりますが、滞納してから1年弱で競売にかけられてしまう可能性が高いので、なるべく早く買主が見つかるよう、金融機関の合意までを早めに取り付ける必要があります。

任意売却にかかる期間はどれくらい?

金融機関から任意売却の合意をもらったら、そこからすぐに買主の募集にとりかかります。
 
どれくらいで買主が見つかるかは断言できませんが、早くて2ヵ月、遅くとも6ヵ月以内には売却を終えないと、競売にかけられてしまうことになります。
 
それぞれの段階でかかる期間のイメージをご紹介します。

任意売却にかかる期間
滞納〜期限の利益喪失まで 6ヵ月
金融機関との合意交渉 数週間〜約1ヵ月
売却活動 2~6ヵ月

任意売却の相談はどこにすればいい?おすすめの相談先は?

任意売却を検討しても、どこに相談すればいいのかよくわからない方が多いのではないでしょうか。
 
任意売却の相談先は、おもに以下の4つが挙げられます。

任意売却の4つの相談先
  1. 弁護士
  2. 司法書士
  3. 不動産会社
  4. 銀行

以下では、それぞれの相談先の特徴を解説していきます。

弁護士

法律の専門家である弁護士であれば、任意売却について的確なアドバイスをもらう事ができます。
 
また、もし任意売却をしたあとに住宅ローンが残ってしまった場合には、分割払いや自己破産などの債務整理を検討する必要があるでしょう。
 
この点、弁護士であれば、その人の状況に合わせて適切な債務整理の方法を選択する事ができるだけでなく、不動産業者との分割交渉や、自己破産の複雑な手続きについてもスムーズな対応をする事ができます。
 
ただし、弁護士は不動産取引の専門家ではないので、不動産の査定や不動産売買を直接おこなうことができません。弁護士に対応を依頼する場合、不動産の査定や直接の売却取引については、専門の不動産業者に別途依頼する事になるでしょう。

司法書士

弁護士と同様に、法律の専門家である司法書士に、任意売却の進め方や債務整理の相談をすることもできます。
 
とくに、登記の専門家である司法書士は、金融機関に抵当権を抹消してもらう際にも、適切なアドバイスをもらう事ができるでしょう。
 
ただし、司法書士は弁護士と比べて対応できる業務の範囲が限られています。
 
任意売却を進めていくうえで、場合によっては司法書士では対応できないケースが出てくるかもしれませんので、その際は別途弁護士などに相談する事になるでしょう。

不動産会社

不動産を市場価格に合わせた適正な金額で売却したい場合には、不動産会社に相談するのがおすすめです。
 
任意売却で1番大切なことは、市場価格をいち早く調査し、適正な金額で不動産を売却することです。そのためには、不動産業者にしっかり調査をしてもらい、綿密な計画を立てて任意売却を進めていく必要があります。
 
なお、不動産業者に相談する場合には、任意売却に特化した不動産会社に相談することを心がけてください。
 
任意売却専門のチームであれば、進め方や市場価格で不動産を売却するためのノウハウを持っているだけでなく、金融機関や公的機関との交渉術も持ち合わせているため、スムーズに手続きを進める事ができます。

銀行

任意売却をする場合、住宅を売却後に残ってしまった住宅ローンに関しては、一括もしくは分割で返済していく必要があります。
 
そのため、どこかで住宅ローンの債権者である銀行との話し合いをする必要があります。
 
また、任意売却をする場合、金融機関の同意を得る必要があるため、そのタイミングで任意売却に関する相談をすることもできるでしょう。
 
ただし、銀行の場合、ほかの3者ほど積極的に任意売却に関する相談に乗ってくれるわけではないので、任意売却をどのように進めていくかなどのメインの相談に関しては、不動産業者や弁護士に相談することになるでしょう。

任意売却をしても残りの債務を払えない場合は?

任意売却で自宅を売却し、その売却額を全額住宅ローンの返済に回しても、もともと残っていた債務額次第では、住宅ローンが残ってしまうケースも考えられます。
 
任意売却をして抵当権を抹消しても、住宅ローン契約自体がなくなるわけではないので、残りの住宅ローンは全額債務者が支払いをする義務があります。
 
競売と違い、一括返済を必ずしも求められるわけではないので、金融機関との交渉次第では、分割返済や少額返済を認めてもらえる可能性があります。
 
また、住宅ローンを組む際に連帯保証人をつけていた場合、任意売却後の住宅ローンの支払いを、連帯保証人に要求してくるケースも考えられます。
 
連帯保証人に迷惑をかけないためにも、一括返済もしくは毎月継続した分割返済のプランを金融機関にしっかり提示することで、返済の信頼を得ておく必要があります。
 
金融機関との分割交渉がうまくいかない場合、任意売却をおこなってくれた不動産業者が、「売却価格の分配案」や「生活状況表」などの資料を基に、利息の減額や分割返済、少額返済などの交渉をおこなってくれるケースもあります。
 
交渉の結果、どうしても毎月の継続した返済が厳しい場合には、弁護士を入れて自己破産をすることも検討する必要があるでしょう。

住宅ローンを滞納しなくても任意売却は可能?

住宅ローンの滞納がない場合、任意売却はできません。
 
任意売却は、金融機関と交渉し、抵当権を抹消してもらったうえで、該当不動産の売却益を残りの住宅ローンの返済に充てる手続きです。
 
金融機関としては、任意売却ではなく当初の予定通り支払いをしてくれた方が、毎月の利息を請求することができるため、メリットが大きくなります。
 
しかし、債務者がどうしても支払いができないのであれば、競売にかけて市場価格の6〜7割の利益を得るよりは、任意売却をしてもらって、市場価格通りの利益を得た方がメリットがあることになります。
 
そのため、まだ住宅ローンを滞納していないのであれば、できるだけ利息を回収するためにも、当初の計画通り返済してくれと主張してくるでしょう。
 
また、任意売却の場合、銀行は自宅につけていた抵当権を抹消してしまうため、任意売却後の残りの住宅ローンに関しては、無担保になってしまいます。
 
返済の担保がなく、大幅に債権を回収できる可能性が下がってしまうことを考えると、滞納していないのであれば、ギリギリまで返済を続けていって欲しいと考えるのです。
 
つまり、住宅ローンを滞納していない状態で任意売却を検討しているのであれば、一度住宅ローン滞納してから金融機関に任意売却の相談をする必要があるでしょう。

任意売却に関するよくある質問 Q&A

ここでは、任意売却に関してよくある質問をまとめました。

任意売却できないケースとは?
次のケースにあたる場合、任意売却ができない可能性があります。
 
・ 税金を滞納して任意売却物件を差し押さえられている
・ 管理費や修繕積立金を滞納している
 
税金の滞納の場合は各市区町村の徴税担当課、管理費や修繕積立金の滞納に関してはマンションの管理組合と交渉して、任意売却を認めてもらう必要があります。
 
交渉する際は、任意売却後の計画的な返済プランや具体的な数字を提示し、滞納分を一括もしくは分割で返済できることを真摯に伝える必要があるでしょう。
任意売却で買い手が見つからない場合の対策とは?
任意売却は、競売にかけられてしまう前に手続きを終える必要があるので、スピーディーに手続きを進める必要がありますが、買い手がなかなか見つからないと焦ってしまい、こちらに損な条件で売却してしまうケースがあります。
 
任意売却を進めるうえでなかなか買い手が見つからない場合には、次の3つの対処法を試してみてください。
 

任意売却で買い手が見つからない場合の3つの対処法
  1. 価格設定を見直す
  2. 内覧対応を丁寧におこない買い手の印象を良くする
  3. 任意売却専門の不動産会社に変更する

 
物件を内覧する人すらいない場合には、そもそもの価格設定を見直す必要があるでしょう。できるだけ高く売却したいと考えれば考えるほど、市場価格から大幅に外れた価格設定をしてしまう可能性があります。
 
買い手が見つからない場合には、最終的には競売にかけられてしまい、市場価格の6〜7割で売却されてしまいます。そうしたデメリットを避けるためにも、市場価格から大幅に外れた金額を設定するのは避けるようにしてください。
 
また、内覧対応を丁寧におこない、価格以上の価値を買主に感じてもらうことが重要です。いくら物件がよかったとしても、不動産会社や前所有者に嫌な対応をされたことで、購入を見送るケースも少なくありません。
 
通常の不動産会社ではなく専門の不動産会社に対応を依頼することも含めて、買い手になる可能性がある1人1人に対して懇切丁寧に対応することを心がけてください。

離婚時にマイホームを任意売却する際の注意点
離婚するタイミングでマイホームの任意売却を検討している場合、「離婚する前」に任意売却をすることをおすすめします。
 
離婚する前に任意売却をした方がいい理由は次の3つです。
 

任意売却は離婚前にする理由
  1. 離婚後は任意売却の手続きが進まない可能性が高いから
  2. 住宅の財産分与が簡単になる
  3. どちらかが物件に居住している場合、支払いが滞るなどのトラブルになる可能性がある


 
任意売却する住宅は、婚姻後に購入したものであれば財産分与の対象となります。そのため、任意売却後のローンの返済の協議も含めて、売却手続きは夫婦でおこなう必要があるのが基本です。
 
離婚したあとに住宅を売却しようとすると、夫婦間で連絡を取ることも少なくなるため、協議が思うように進まなくなる可能性があります。
 
また、離婚前に住宅を売却してしまうことで、残りのローンをどちらがどのように返済していくかを決めるだけになるので、財産分与がわかりやすくなります。
 
夫婦のどちらかがまだ住宅に住んでいる場合や連帯保証人がついている場合など、離婚後にトラブルになるようなことは、離婚する前に片付けておくようにしてください。

自己破産せず任意売却だけで解決できる?
住宅ローンの滞納に関する問題は、多くの場合、自己破産せずに任意売却のみで解決する事ができます。
 
住宅ローンは、もともとの借入金額が数千万円とかなり大きいため、市場価格で住宅を売却したとしても、平均で700万円〜800万円ほどの住宅ローンが残ります。
 
しかし、そもそも任意売却は、住宅ローンを滞納してしまい、これ以上継続的に返済するのが難しくなってしまった方がとる手続きです。金融機関も、債務者の経済状況はある程度わかっているため、残りの住宅ローンの分割返済や少額返済に応じてくれる可能性が高いです。
 
このように、任意売却をする場合、自己破産をする事なく住宅ローンの滞納問題を解決できるケースがほとんどです。
自己破産を進めながら任意売却をすることもできる?
自己破産を進めながら任意売却をすることも可能です。
 
自己破産をする場合、競売もしくは任意売却で手持ちの不動産を売却する事になりますが、任意売却であれば、リースバックで住宅に住み続けたり、引越し代を捻出する事ができる可能性があります。
 
自己破産の手続き中なので、引越し代などの財産をどうするかは、弁護士の判断を仰ぐべきですが、少なくとも、競売にかけられるよりは任意売却の方がメリットの大きいものになるでしょう。
任意売却は差し押さえを解除すればできますか?
住宅ローン以外の借金や税金を滞納していた場合、金融機関に任意売却の同意を得るのを前提として、差押えを取り下げてもらえれば、任意売却をする事ができます。
 
債権者に差押えを取り下げてもらうためには、任意売却後に滞納分の返済を約束したり、今の状況を真摯に説明するしかありません。
 
税金の場合、いろんなところからの差押えが多すぎて、もうこれ以上担保から配当金を得られない状態である「無剰余」を理由に、差押えを取り下げてくれるケースもありますが、多くの場合、優位な状況にある差押えを簡単には取り下げてくれないでしょう。
債権者抹消同意とは何ですか?
任意売却をする場合、「債権者」である金融機関に、抵当権を「抹消」してもらうための「同意」をしてもらう必要があります。この同意のことを「債権者抹消同意」といいます。
 
任意売却物件の売買契約が成立した場合、契約書には特約として、「債権者から抵当権の抹消同意が得られない場合には、契約を白紙解除できる」旨の文言が盛り込まれます。
 
任意売却物件の抵当権等の抹消は、売主の義務であり、これが果たされない場合には、本来であれば違約金を支払わなければいけないはずです。
 
しかし、任意売却の場合、売り主に違約金を支払う資力がないため、トラブルを回避する意味で契約を解除する事になっています。
 
また、債権者である金融機関としても、売買契約が現実に取り交わされたあとでないと、無担保になるリスクを負う抵当権の抹消をしてくれません。
 
なお、ほとんどの場合、売買契約の前に金融機関と売却価格の取り決めをしておくため、抵当権の抹消同意を拒否されることは基本的にありません。
任意売却の反対語とは?
任意売却の反対語は、「強制競売」です。
 
任意売却は、物件を自分の意思に基づいて売却することですが、強制競売の場合、自分の意思とは関係なく、強制的に手続きが進んでいきます。
 
また、任意売却は、抵当権を根拠として手続きを進めていきますが、強制競売の場合、抵当権ではなく債務名義を根拠として手続きを進めていきます。
 
債務名義とは、債務者としての名義のことを指し、たとえば、確定している判決や公正証書、和解調書などのことを指します。
 
任意売却、強制競売ともに、残りの債務の返済に充てるためにおこなわれるものになります。
 
なお、「担保不動産競売」という言葉を聞いた事があるかもしれませんが、担保不動産競売と競売は同じものを指します。
 
また、通常の「競売」は、任意売却と同じように抵当権を根拠に手続きを進めていきますが、「強制競売」の場合、抵当権ではなく債務名義を根拠に手続きを進めていく点に違いがあります。

まとめ

住宅ローンの支払いを滞納してしまい、今後の返済も困難である場合、競売にかけられてしまう前に任意売却することをおすすめします。
 
任意売却を検討している場合、メリットやデメリットをしっかり把握して手続きをおこなう必要がありますが、滞納してからおおよそ半年から1年度程度経過すると競売にかけられてしまいます。スピーディーに手続きを進め、市場価格で物件を売却するためにも、弁護士や任意売却の専門家に依頼すると良いでしょう。
 
また、任意売却後に住宅ローンが残ってしまったら、分割での返済や自己破産等の債務整理を検討する必要があります。あらかじめ、売却後の返済プランを考えておくことをおすすめします。

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この記事の執筆者

大泉 聡
株式会社cielo azul代表。横浜市立大学卒。東京電力ホールディングス株式会社にて、決算業務や財務の仕事に携わる。会社設立後、約7年間にわたって、借金問題の解決に向けた専門サイト「債務整理相談ナビ」を運営。

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